われわれにも朱肉でなじみ深い『朱』という赤い色は、 日本でもっとも有名な伝統色のひとつと言えるでしょう。ただし『朱』といってもさまざまな色合いがあり、それぞれに趣があります。この期では代表的な「朱色」をはじめとした5種類の『朱』をご紹介します。
朱色(しゅいろ)
朱色とは赤とオレンジ色の中間色で、元来は天然赤色顔料辰砂(硫化水銀からなる鉱物、別名に賢者の石)の色ですが、今はやや黄を帯びた赤色の総称となっています。
艶やかな朱色の地に金色と白の五葉松の模様が、眩しいほどのきらびやかさを醸し出している色打掛。
朱色とは赤とオレンジ色の中間色で、元来は天然赤色顔料辰砂(硫化水銀からなる鉱物、別名に賢者の石)の色ですが、今はやや黄を帯びた赤色の総称となっています。
現在、主に披露宴で着用される色打掛は地紋を施した色地や白地に、赤、緑、金、銀など華やかな色を、刺繍や織、染、印金・箔などの技法を使って、めでたい吉祥文様(きっしょうもんよう)を描いています。
紅色(べにいろ)
キク科の紅花の汁で染めた鮮やかな赤色のこと。“くれないいろ”とも呼びますが、両者に色の違いはありません。
紅色はキク科の紅花の花びらから採取した色素で染めた鮮やかな赤色のことです。
展示品は、その鮮やかな紅色に染められ、さらに骨の数が46本、生地は絹(羽二重)・紙・竹製、2段階開閉など機能性にも優れた見事な和傘です。
和傘は歌舞伎や日本舞踊、茶道の中でも取りいれられ、それぞれの伝統を付加した独自の進化を遂げ、他国に類を見ない非常に豊かな、我が国固有の和傘文化とも呼ぶべき土壌を作り出していきました。
猩々緋色(しょうじょうひいろ)
能の演目『猩々』の役者の面や装束の鮮やかな赤色が由来とされるこの色は、臙脂色(えんじいろ)と区別するために付けられた色名で、緋色の中でも強い黄味がかった鮮やかな朱色のことをいい、猩猩緋色とも記します。なお猩々は中国の猿に似た想像上の動物です。
中国の想像上の動物で、能の演目でもある「猩々」。これに由来する猩々緋色は緋色の中でも特に強い黄味がかった鮮やかな朱色のこといいます。この冴えた色が戦国武将の心をとらえ、陣羽織などに重用されました。
展示品は綿100%の注染豆絞り手ぬぐい地でできているがま口です。がま口は明治初期に、口金がガマ(ヒキガエル)の口に似ているところからそう呼ばれるようになりました。なお、注染とは伝統的な型染めの一種で、主に手ぬぐいの染色に使われる技法です。
真朱色(しんしゅいろ)
朱色の中でも人工顔料による銀朱と区別・強調するため、天然顔料としての朱色をこう呼びます。他にも「まそほ」、「まそお」とも読みます。銀朱と比べるとややくすんだ深みのある朱色です。
真朱色は、天然の硫化水銀原鉱から作られた顔料の、ややくすんだ深みのある朱色のことで、万葉集ではこの色を「まそほ」と呼んでいます。
展示品は日本で唯一の鬼越真朱焼(おにごえしんしゅやき)の伝統を守り続け、千葉県伝統工芸品にも指定されている鎌ケ谷市の三橋窯業製の花瓶です。二代目敬山(故三橋英作)作で、全日本中小企業輸出見本市において、輸出優秀商品と選定され、平成九年二月に皇室献上しています。現在は燃えるような真紅が特徴の焼き物になっています。
緋色(ひいろ)
植物のアカネの根を原料とする茜染の一種で、最も明るい茜色を緋色と言います。日本では大和朝廷時代より緋色が官人の服装の色として用いられ、紫に次ぐ高貴な色として位置づけられました。
展示品は緋色に白、金、緑の色を使い、大胆に椿が描かれた美濃焼の長角皿です。美濃焼は九谷・有田など他の焼き物産地と多少異なり、一つの焼物様式を持っておらず、美濃 (東美濃地方)で焼かれた器というのが一番わかりやすい説明でしょう。