今回は、日本特有の色として好まれている5種類の「青」をご紹介します。
縹色(はなだいろ)
つよい青色のことで、もともとは露草(つゆくさ)を染料として染めていた色ですが、色あせしやすいため藍で染めるようになりました。古くは、青色系統の総称として使われており、花田色、花色とも書かれます。
つよい青色のことで、ややくすんだ青のことを指し、花田色、花色とも書かれます。純粋な藍染めの色で、紺色が深縹(こきはなだ)に相当し、中縹(なかはなだ)が「つよい青」の縹色とされています。縹色の別名「花田色」の「花」は露草(つゆくさ)の花の意味とされています。展示品は、千葉県伝統的工芸品に指定されている下総染小紋(しもうさぞめこもん)の染物職人 鈴木保雄氏の作品で、手彫りの型ともち米、米ぬかから作る糊(のり)を使用し、全て手作業で作られています。
群青色(ぐんじょういろ)
飛鳥時代、中国から渡ってきた顔料から作られる「青色」で赤みの少ない紺色です。薄い青は「白群(びゃくぐん)」、濃い青は「群青」、紫がかった濃い青を「紺青(こんじょう)」と呼びます。
やや紫みを帯びた深い青を指します。群青の原料となる鉱物は天藍石(てんらんせき)とよばれ、古くから貴重な鉱物として、至上の存在である神を描くのに用いられたそうです。群青色は、ウルトラマリンブルーとも呼ばれ、「群青色の空」「群青色の海」などといった明るく爽やかな青を形容する時に使われます。展示品は"花火"と題された創業300年の老舗「阿以羽(あいば)」製の京うちわで、群青色が花火を美しく彩ります。
藍色(あいいろ)
日本の伝統色での青色の多くは、古来より植物染料の「藍」を用いて染められてきました。藍染めの特徴は、薄い色は「緑」がかり、濃い色は「紫」がかっています。そして、虹を7色とする日本では、7色の中に藍色が含まれています。
濃い青を指し、紺色より明るい色をいいます。藍は世界最古の染料といわれ、日本でも古くから用いられてきました。江戸時代から明治時代にかけて普及し、 庶民の衣服には欠かせない色となりました。現在でも藍染めは代表的な染色の一つであり、国が表彰する藍綬褒章(らんじゅほうしょう)の綬(りぼん)には藍染めが用いられています。展示品は阿波の天然藍で染めた和紙で作られたのれんです。
瑠璃色(るりいろ)
瑠璃は古来より七宝(しっぽう)の一つとされた濃い青色の宝石です。同じような色のガラスのことも瑠璃と呼ばれていました。その代表的な作品が長崎びーどろです。
一般的に宝石の瑠璃のような紫みを帯びた濃い青のことを指します。瑠璃は仏教でいう七宝(しっぽう)の一つで、宝石の英名はラピスラズリです。瑠璃はガラスを意味する言葉としても使われ、西洋では聖母マリアのローブの色として用いられています。展示品は、長崎びーどろの盃です。鎖国の時代にポルトガルからガラスの製造技術が伝来した長崎の美しいガラス工芸品は"びーどろ"と呼ばれていました。
杜若色(かきつばたいろ)
古くはアヤメ科カキツバタの花を染料として布を染めていたため、この色名が付けられています。花名の「カキツバタ」は「書き付けの花」と呼ばれ染料として使われたことに由来します。鮮やかな紫がかった青色をこう呼びますが、実際の花の色は赤みがかった紫色です。
あざやかな紫みの青で、アヤメ科カキツバタの花に似た紫色を指します。「何(いず)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」とは、いずれも優れていて選ぶのに迷うことをいいます。和服や和装小物などによく使われるほか、文房具にも使われる人気色です。展示品の抹茶碗は、江戸琳派の先駆けで、繊細で風情ある作品を生み出した酒井抱一(さかいほういつ)の十二ヶ月花鳥図を模した京焼き"抹茶碗"です。あざやかに描かれた"杜若"をお楽しみください。