温かみのある手作りのガラス、しなやかで柔らかい風をつくる房州うちわ、 大漁を祝う萬祝半纏(まいわいはんてん)、茶の風雅な世界の一角を演出する細工楊枝(さいくようじ)、福を願いながら手作りされている張子(はりこ)。いずれも伝統の技に支えられている品々です。
職人の技を、展示品を通して触れていただければ幸いです。
九十九里で作られているガラス製品は、斬新(ざんしん)なデザイン、モダンな色使いで千葉県発のブランドとして確固たる地位を確立しています。
全国各地で広く販売されていますが、すべて千葉県でひとつずつ職人によって手作りされた作品です。手にした瞬間、思わず微笑んでしまうような温かみのあるガラスを届けたい、という思いが込められています。
手作りの温かさと質にこだわる力強さを感じさせてくれる逸品です。
房州うちわは「風」が違う。江戸時代からそう評されてきました。軽いあおぎでも風量がでるが、その「風」はしなやかで柔らかい。その秘密は素材である千葉県産のよくしなる竹と、1本の竹から骨を割り出す製法です。現在もその作り方は変わらず、職人たちがその技を受け継いでいます。
古典柄から現代的なデザインのものまで幅広く作られていて、私たちの心を癒やす柔らかな風を送り続けています。
大漁を祝う萬祝半纏。千葉県鴨川市近辺で大漁旗などと一緒に手描きで製作されています。
東日本大震災で津波によって壊滅的な被害を受けた岩手県山田町では、漁業の建て直しへの決意表明と、被災者を元気づけるために大漁旗を注文。注文された旗と、鴨川の染色工房から贈られた2枚の大漁旗が、現在瓦礫(がれき)で埋めつくされた海岸の町の中心に大きくたなびいています。千葉県で染め上げられた萬祝の旗が東北地方の人々へ元気を届けています。
房総の山中に自生する黒文字(くろもじ)を使って茶道用の楊枝や箸、料亭向きの細工(さいく)楊枝(ようじ)が作られています。素材は竹のように見えますが、樹皮にある黒色の斑点が文字に見えることから「黒文字」と呼ばれる楠木(くすのき)科の低木の一種です。木に独特の香りがあり、高級楊枝として知られています。多彩な切り込み飾りがあしらわれた楊枝は、片隅に添えるだけで器に粋な気配りを感じさせます。市原市、いすみ市で作られていて、千葉県の伝統的工芸品に指定されています。
木型に何枚もの和紙を重ね、糊(のり)で固め、表面を仕上げた後に彩色をかけると張子人形ができあがります。だるまや招き猫など招福人形の製造をきっかけに江戸時代から発展してきた郷土玩具のひとつです。千葉県では香取市の張子が有名で、年賀切手に登場したこともあります。
紙製ならではの少し凹凸のある表面に色鮮やかな絵の具が見せる動物や人間の表情はどこかユーモラスで温かみがあり、見る人に元気と笑顔を届けてくれます。