今年度も、「素材を生かす知恵」に焦点をあてて、日本の道具を形づくる素材のもつ魅力、特性をご紹介しています。 今回は、「金物」をテーマに作品を取り揃えご覧いただきます。
金属は種類によって異なる特性をもっています。日本では古くか らの知恵によって金属を使い分け、その加工技術も発達してきました。色彩、重量感が異なり、多様な表情を見せる金物細工をお 楽しみいただければ幸いです。
本金糸は金を細く長く伸ばして作られたものではありません。
先ず、向こうが透けて見える程薄い和紙に漆を塗り、さらに薄い1万分の2~3ミリの厚みしかないと言われている金箔を貼りつけます。この和紙と金箔が合体したものをさらに0.3ミリという細さに断裁します。この断裁を以前は包丁を使って切っていたというのですから、その技術の高さには驚かされます。そして芯となる糸にそれを巻きつけて仕上げたものが本金糸です。
鉄製の食器や鍋は使用することで自然に体内へ鉄分を摂取することができるため今も多くの人に愛用されています。
鉄器は盛岡の南部鉄器が有名です。約400年前に盛岡藩主の保護を受けて以来、その技を受け継ぎ今も日本を代表する工芸品のひとつです。
代表的な鉄瓶(てつびん)や囲炉裏(いろり)に似合う古里鍋をはじめとし、現代の生活様式に合わせて風鈴や急須、ジンギスカン鍋など多種にわたる鉄工芸品が作られています。
金箔は十円玉程の金を畳一畳の大きさまで打ち伸ばして作られたものです。しかしそれは力で叩きつぶしているのではなく、打った時に金が発する熱によって自然と伸びていく力を利用しているのです。その伸びが滑らかに、より大きくなるように「打紙(うちがみ)」という表面の滑らかな紙の上で作業は行われます。その紙の質次第で箔の出来上がりが決まると言われるほど打紙選びは重要です。そのように作られた箔は1ミリにも満たない究極の薄さなのです。
錫(すず)はとても柔らかく、機械での加工ができず、制作工程のほとんどは手作業で行われています。錫の板を鎚(つち)で打って形づくる方法と、轆轤(ろくろ)を使い、塊(かたまり)から形を削りだしていく手法などがあります。
錫は錆(さ)びず、金属的な匂いもなく、防湿性に優れていることから、茶器や酒器といった食器が多く作られています。また、熱伝導がとてもよいので、錫の徳利(とっくり)に酒を入れ、裾の部分を適温の湯に1分程つけるだけでおいしい燗(かん)が出来上がります。
金網細工の始まりは平安時代にまでさかのぼるとも言われています。この工芸品の特徴は、今も現役で使われている日用品であるということです。
おもに銅線を使います。使用目的に合わせて大きさや網目の形を考え、職人がひとつひとつ手で編みあげます。網目を粗めに編む豆腐すくい、大きな木型を使って作る火鉢用の覆(おお)い網。使いやすいように足を付けた焼き網。美しい網目を活かして飾り篭。金網細工は私たちと共に今日も暮らしています。