今年度は、「素材を生かす知恵」に焦点をあてて、日本の道具を形づくる素材のもつ魅力、特性をご紹介しています。
今回は、「土」を素材とした品々をご覧いただきます。
土は、自然の営みの中で大きな役割を担っていますが、道具を作る材料としても欠かすことはできません。さらに火の力を加えるとその姿は変化し、多様な道具となり、私たちの生活の中で活躍しています。長い時間の中で考案され、愛され続けてきた土製品をお楽しみいただければ幸いです。
沖縄の土は、名酒・泡盛作りでとても大きな力を発揮します。泡盛は、木の樽ではなく、赤味を帯びた「南蛮壷」に入れて寝かせます。
沖縄で産出されるジャーガルと呼ばれる土に赤土をブレンドし、粗焼きしたものが南蛮壷です。
土には泡盛の熟成効果を助ける力があります。土に含まれている微量の鉄やマンガンなどの金属成分が壷から染み出し、長い年月のうちに泡盛の芳醇な香りや味わいを引き出してくれるのです。
房総半島の東部沿岸を縁取る九十九里浜は長さ66キロにわたる日本有数の砂浜です。浜にある砂は川から流れ出たり、波の侵食で削られた陸地の土砂が、沿岸流という潮流に乗って海岸線に漂着したものです。
その九十九里浜の砂を利用して「九十九里焼」は作られています。九十九里浜近くの工房で焼かれており、千葉県優良県産品に指定されています。砂目を感じさせる凹凸ある表面と厚手の重量感が特徴です。
酒盃には、洒落(しゃれ)のきいた仕掛けが施されたものがあります。「透かし盃」は飲み干すと、底面に絵柄が浮き出て、「鶯盃(うぐいすはい)」は小さな穴を吸いながら飲むと鶯のさえずりが聞こえます。「さいころ盃」は付属のさいころの出た目によって飲む量などを決める遊び盃。「八分盃(はちぶはい)」は八分以上注ぐとなぜか底から酒がこぼれ出す不思議な仕掛け。「可盃(べくはい)」は底の穴を指で塞いで使うので、酒を飲み干すまで下に置けないというちょっと意地悪な盃です。
土製の行灯(あんどん)を瓦職人が片手間に作ったところから「瓦燈」と呼ばれています。油の入った火皿を入れ、土製の覆いをかけて部屋の中で使われていましたが、電気の普及とともに姿を消しました。
展示している瓦燈は、福島県会津市で夏と冬に催される絵ろうそく祭用に作られた「起き上がり小法師瓦燈(こぼしがとう)」です。絵ろうそくが灯された瓦燈が鶴ヶ城に七千個設置され、その幽玄な風景が人々の目を楽しませています。
伏見人形は、日本の土人形で最も古い歴史があります。京都・伏見稲荷大社がある稲荷山の土を用いた祭祀用の土器作りから派生したものと言われています。やがて旅人や商人などによって全国へ持ち出され、日本各地の土人形の誕生や進化へ大きな影響をもたらしました。
土人形の代表的な型のひとつである招き猫は、一般的には右手を挙げると商売繁盛・招福、左手を挙げると千客万来をもたらすと言われています。