今年度は、日本の伝統文化のなかで受け継がれてきた、様々な色や文字、文様などをご紹介しています。今回は、情報伝達という役割だけではなく、デザインとして取り入れられている様々な文字をご紹介します。日本の伝統的なものにまつわる文字の面白さや奥深さを感じていただければ幸いです。
江戸の町火消しはユニフォームとして半纏を着用しました。背中の文字は町、腰の白線は組(地区)、肩の赤線と文字が階級を表し、ひと目で着ている人の身元がわかるようになっています。祭り半纏も同じく、色や書かれている文字で階級や役割が判るようになっています。
提灯が中国から伝わったのは室町時代より以前といわれ、江戸時代に携帯できる灯りとして流行しました。この独特な提灯文字と勘亭流文字(歌舞伎文字)が組み合わされ寄席のビラ文字の寄席文字が生まれました。そして、これらを総称して江戸文字といいます。
大漁旗は本来、浜辺の家族や仲間に大漁を知らせる通信手段であり、そのため旗の文字は遠くからでもよく判るように肉太に書かれました。千葉県の伝統的工芸品である萬祝式大漁旗は現在でも、漁船の進水式や結婚の贈り物として、祝いと祈りをこめた文字を入れてつくられています。
かるたはポルトガル語の「Carta」が語源で、安土桃山時代に渡来した南欧文化のカード遊びでした。流行すると共に独自の形式を持つようになり、江戸初期には詩歌を書いた「歌かるた」が生まれます。百人一首は鎌倉時代の歌人藤原定家が編集した歌集ですが、絵入りの歌かるたとして広まりました。
手ぬぐいは儀礼装身具として、古代からありましたが、様々な用途で使われるようになり庶民に広まったのは江戸時代からです。文字を用いて描かれた戯画を「文字絵」といい、江戸時代に大変流行しました。手ぬぐいはこのような流行を取り入れ、実用とお洒落を兼ねた生活道具となりました。