今年度は、日本人の暮らしの中のしきたりに焦点をあてて、昔から今へと時代とともに姿を変えていくしきたりの一端をそれにまつわる品々の展示をとおしてご紹介しています。今回は「飾る」をテーマに、伝統的な飾り結びの世界をご覧いただきます。
その年初めてのお茶を挽いて、点てる口切の茶事。茶人の正月ともいわれます。茶壷の封印を解いた後には、真行草(しんぎょうそう)の結びをして床の間に飾られて、祝いの心が表現されます。
訶梨勒(かりろく)はインドシナ半島などに分布する落葉樹。その果実は眼病、風邪に効能があり、袋に入れて部屋の柱に掛けて常備薬にしました。いまでは、お正月の床の間の飾りとなっています。
祝餅、赤飯などを入れて家から運び出すのに用いる器。雛飾りの道具にも一対で登場しています。脚から紐を通して蓋の上で結び目をつくり、運ぶときには天秤棒を通して担ぎました。
茶の湯が盛んであった武家社会では、武将に仕えた茶道役は異物の混入を防ぐために、自分だけが知っている秘伝の封じ結びを編み出しました。のちに平穏な時代になると、花結びとして装飾化されて現在に至ります。
文箱(ふばこ)は書状を入れて往復する場合にも使われました。時や場合によって、真行草(しんぎょうそう)の三様に結び方を使い分けましたが、これはもっとも格の高い淡路結び(あわじむすび)の封じ結びです。