今回は「寛ぐ(くつろぐ)」をテーマに、粋な道具類をご覧いただきます。
たとえば、行灯、そのたった一つがあるだけで、いつもの部屋も趣ある空間に一変します。それは、灯や炭の火を見て目からも温もりを感じ取る日本人の感性故でしょう。
かって暮らしの中に当たり前にあった道具たちから、寛ぎの空間が広がるのを感じていただければ幸いに存じます。
中国明代の文人墨客が自由にお茶を飲む「煎茶趣味」に、江戸の文人たちが憧れて確立した煎茶道。こまごまと道具が楽しいものです。涼炉で湯を沸かします。
涼炉は円筒形の部分の道具を指します。外壁に風を送る風口があり、内側に炭を納めます。
上部の受け口の形が直線の一文字炉式と、今回の展示品のような三つ山のある三峰炉式とに大別されます。磁器や金属製のものも見られますが素焼きのものが多いようです。
涼炉の上にのせられている急須のような形をしたものを「ボウフラ」と呼びます。これはポルトガル語でカボチャのことを意味し、姿が似ていることからつけられた名前だと言われています。
また、涼炉の下に敷いてあるものは「炉台」と呼ばれるものです。直接床に火や灰がこぼれないようにするためと、畳や敷物への熱を遮断する目的で使用されます。
左の火入れには炭火が入り、右の灰落としに灰をいれます。「客あればお茶より先に煙草盆」といわれるほど、庶民の家庭でも日常品でした。
仏教伝来と共に香文化が到来。香を焚いて香りを楽しむ道具が香炉です。
素材も姿形も数限りなくあります。床を飾るには、四季に応じたものを選びます。
灯台に風よけの和紙の覆いをつけて作られたのが始まりです。有明行灯(ありあけあんどん)、遠州行灯(えんしゅうあんどん)など種類はさまざまですが、これは寝室や居間など手元に置く、置行灯です。
お茶席の腰掛寄付(こしかけよりつき)や待合(まちあい)などに使われ、対で売られています。戦前は祝儀不祝儀(しゅうぎぶしゅうぎ)を各家で行ったため、上流家庭では何対も揃えていました。