今年度も、「素材を生かす知恵」に焦点をあてて、日本の道具を形づくる素材のもつ魅力、特性をご紹介しています。
今回は、「ガラス」を素材とした品々をご覧いただきます。ガラスの持つ透明感と、美しい色彩をお楽しみください。長い時をかけて培われた技術に、現代の職人たちのデザイン力が加わり、新しい力を生み出しています。
涼しげに輝くガラスの素材感をみなさまにお伝えできれば幸いです。
丸みを帯び、はっきりとした色のぐい飲みは琉球ガラスの作品です。戦後、沖縄県にアメリカ軍が駐留していた時、ジュースなどの空き瓶が大量に排出されました。それを再利用しようと作りだされたのが琉球ガラスです。当時は再利用ガラスであったため、透明度も低く、気泡が入っていました。その後、味わいを残しつつ、材料を改良し、技術を生かした新しい琉球ガラスが出来上がり、平成10年には沖縄県の伝統工芸品にも指定されました。
ガラスペンは明治末期に日本の風鈴職人によって開発されました。硬質ガラスで作られたペン先は、通常の万年筆にも劣らない滑らかで耐久性に優れた仕上がりです。ペン先には細い溝が刻まれていて、その溝にインクが含まれる仕掛けになっています。一度インクを含ませるとハガキ一枚分程度を書くことができます。
ペンに使用している硬質ガラスは高温での難しい細工が必要で、熟練した職人たちによって一本ずつ丁寧に手作りされています。
油を用いた照明道具には、油で皿を満たし、芯を入れた簡単なつくりのものや、紙で覆いをつけた行灯(あんどん)などがありました。時が経ち、西欧から様々な物が入って来るようになるとランプが日本の生活に登場します。ガラスの製造技術も進み一般へ普及すると、色鮮やかなガラスを使ったオイルランプが人気を集めました。装飾的にも美しく、ガラス越しにこぼれる灯りはとても柔らかいものでした。その後登場したガス灯や電気の灯りにはない温かさを感じさせます。
香水は1920年から1930年頃に、一般市民に普及したと言われています。そしてヨーロッパではその普及に合わせて、ガラス製の香水瓶が発売されました。小ぶりな器にも関わらず、女性たちの心をつかむべく、細かな細工が施された逸品が数多く作られました。
現在ではスプレー式の香水瓶が多く使われていますが、美しさを求める女性たちのために、ガラス作家たちが技を駆使して今日も新しい香水瓶を送りだしています。
千葉県にもガラス工房がいくつかあり職人たちが日々美しい作品を作り続けています。
この花器は、九十九里にある大きな工房で制作されたものです。工房には数十人にも上る職人たちがおり、約4000種類もの器を制作しています。洗練されたスタイルは世代を超え、幅広い支持を集めています。
独自の技術に加え、チェコからガラス職人を迎え新しい技術を習得するなど、今も進化し続けている千葉県のガラス工芸です。