今年度は、日本の伝統文化のなかで受け継がれてきた、様々な色や文字、文様などをご紹介しています。今回は、日本人が古くから生活に取り入れてきた“文様”をご紹介します。私たちの身近なところで受け継がれている文様に新たな発見や親しみを持っていただければ幸いです。
家紋は家の目印としての文様から生まれ、様々なかたちがありますが、その神秘性から信仰の対象であった月や星も家紋に使われるようになりました。千葉県の伝統的工芸品の上総角凧は江戸中期から伝わり、鯉や武者絵などが描かれますが、男子が生まれるとその健康を祈り家紋を凧に入れ空にあげるという習慣もあります。
舞扇子は舞踊に使われる扇です。室町時代以降に発展した能や茶道と同じく舞の世界でも扇を使い独自の形式を持つようになりました。大きさは9寸5分(約 29cm)と扇いで涼をとるための実用扇より大振りで、舞台用のものは骨に塗りを施します。雲や霞、水などの文様が多く使われます。
蒔絵とは、漆器に漆を用いて文様を描き、金銀粉を蒔いた後、さらに加工研磨することをいいます。文様のモチーフとして使われる動物の中でも鳥は特に好まれて多用されており、梅の木に鶯が止まっている様子は、取り合わせが良いもの、美しく調和するものという意味の慣用句「梅に鶯」にもなっています。
古代では鏡は呪術や祭祀に使われていましたが、平安時代より化粧をする習慣が生まれ鏡や鏡台が使われるようになりました。また鏡台は婚礼家具のひとつとして美しく装飾されるようになりました。唐草文様は西アジア原産の地に這う「つる草」を文様化したもので、中東地域からシルクロードを経て中国、日本に伝わりました。
お宮参りの赤子の掛け衣装である初着は、赤子の成長と将来の加護を願い縁起がいい「吉祥文」が多用されます。
<初着に使用されている文様>
鷹
強さを象徴し、また高く飛ぶことから運気上昇の願いがこめられています。
松竹梅
常緑の松は長寿を、成長の早い竹は子孫繁栄を、梅は五つの花びら「福・禄・寿・喜・財」を表します。
小鼓
楽器の文様はその形の美しさから優雅さを象徴します。
矢羽
魔除けや招福の意味を持つ破魔矢を表します。
扇
その形から末広がりを意味し縁起がよいとされます。
打出の小槌
金運や財運をもたらすといわれています。