この4月からは、日本人の暮らしの中のしきたりに焦点をあてて、昔から今へと時代とともに姿を変えていくしきたりの一端をそれにまつわる品々の展示を通してご紹介してまいります。
今回は、陽射しもやわらかく外へと誘われるこの季節にふさわしく、装いのしきたりをご紹介いたします。
江戸時代には、お歯黒や眉化粧、髪型などによって、その女性の未婚既婚の区別やおよその年齢がわかりました。(お歯黒は、五倍子(ふし)の粉に鉄汁を加えて混ぜた液で歯を染めました。)
[左] 五倍子の粉をいれておく小箱
[右] 鉄汁を注いで混ぜるための道具
懐にいれて持つ女性の装身具。もとは幕府や大名の奥女中などが正装の際に用いて、中に懐紙をいれました。現在は、七五三のお祝いや婚礼衣装の装飾品として使われています。
棒を組んでつくられた伏籠(ふせご)の上に着物をかけて、香を焚きしめるのに用いました。かつては大名家に伝来する香の種類があり、その薫香(くんこう)によってどこの大名かが分かったようです。(展示品は実寸の約1/2に縮小されたものです。)
下駄には、歯のかたちや塗りの違いによってさまざまな種類があります。江戸時代の中頃に、男女ともに塗り下駄が大流行すると、町人達に対して禁止令がだされた時期もありました。
女性の結いあげた髪を美しく飾る簪(かんざし)。薄い絹地を細工して作られたつまみ簪は、今の時代も若い女性に用いられています。(展示品は、穂積実氏(市川市)が特別に製作された千葉県指定伝統的工芸品です。)