今回は、春に花がいっせいに咲き始める頃をあらわす季語「花時(はなどき)」という美しい言葉に寄せて、粋な日本の春をお楽しみいただきます。
春は桜。桜といえば花見。いまでも桜が咲くといたるところで催される花見ですが、最も盛んで自由に遊宴に興じていたのは江戸時代の人々かも知れません。
花見の席には欠かせない粋な道具類を通して春を感じていただければ幸いに存じます。
手提(てさげ)のついた台に重箱を載せた提重(さげじゅう)と呼ばれる形状。一緒に錫(すず)製の銚子のついた豪華な花見弁当です。
硯(すずり)、水滴(硯に差す水を入れる容器)、墨を納めた硯箱。花見の席で俳句や漢詩を詠むために使いました。
旅行や遊山(ゆさん)用に必要最小限のものを仕組んだ茶道具セット。竹筒の中には、茶筅(ちゃせん)と一緒に、茶杓(ちゃしゃく)を折り畳んで仕舞います。
屋外で酒の燗を楽しむ道具。銚釐(ちろり)に酒を注ぎ、周囲に水、左の穴に炭を入れて温めます。そして別の銚釐に移し変えて盃に注ぎます。
上部に注ぎ口のある箱状の樽は、指樽(さしだる)と呼ばれます。貯蔵用、運搬用としての用途の他に、祝事の際の祝酒を贈るためにも用いられました。