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NISA、iDeCo、定期預金、保険……
「まずは安心」がキーワード
資産運用の選択肢いろいろ
資産形成
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これからの生活や老後に向けて、少しずつでもお金を蓄えておきたい。でもリスクの高い資産運用には不安がある……。そんな方は、まず「リスクを抑えた資産運用法」を検討してみませんか?
本記事では、資産運用における「リスク」という言葉の捉え方や、具体的に検討できる資産運用の手段について、わかりやすく解説します。今あるお金を守りながら、無理なく育てていくヒントとして、ぜひ参考にしてください。
- 1:“リスクを抑えた”資産運用ってどういう意味?
- 2:初心者にも人気!NISA(新NISA)のキホン
- 3:老後の備えに。iDeCoの特徴と注意点
- 4:やっぱり安心?定期預金の特長と活用方法
- 5:保険で“守りながら資産を育てる”方法とは?
- 6:目的と時期で選ぶ、リスクを抑えた資産運用の実践アイデア
- 目的に合わせ、リスクを抑えた資産運用を実践しよう
株式会社Money&You取締役、ファイナンシャル・プランナー 中央大学客員講師
高山 一恵さん
2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社) 、『50代から考えるお金の減らし方』(成美堂出版)など書籍100冊、累計190万部超。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。
1:“リスクを抑えた”資産運用ってどういう意味?
「リスク」という言葉にはさまざまな意味がありますが、資産運用での「リスク」は一般的に「運用成果の振れ幅」を指します。
このリスクは、運用成果である「リターン」と比例する関係にあります。例えば、リスクの高い金融商品を選べば、大きな利益を得られる可能性がある一方で、大きな損失を被る可能性もあります。基本的に、リスクが小さいのに大きな利益が期待できる、いわゆるローリスク・ハイリターンの金融商品は存在しません。
ローリスク・ハイリターンの商品が存在しない以上、資産を増やすにはある程度のリスクを取る必要があります。ただ、工夫次第で「リスクを抑える」ことは可能です。
その工夫とは「長期、積立、分散」の3つを意識することです。
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- 長期:
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長い時間をかけて運用することで、短期的な価格変動の影響を受けにくくなり、得られた利益を再投資することで「複利」の効果も期待できます
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- 積立:
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定期的に一定額を投資することで、購入タイミングが分散され、高値掴み(価格が高いときにまとめて買って損をすること)のリスクを抑えられます
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- 分散:
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資産の種類や地域、銘柄などを分けて投資することで、一つの値動きに大きく左右されることを防ぎ、資産全体の安定性を高めることができます
金融庁の資料によると、国内外の株式や債券に毎月同額を積立投資した場合、5年間の運用では元本比で、「−8%~+14%」と損失が出る可能性が示唆されています。しかし、運用期間を20年に伸ばすと「+2~+8%」の範囲となり、資産が増える可能性が高くなると試算されています。
このように「長期、積立、分散」に配慮した資産運用法では、時間を味方につけてリスクをやわらげながら、複数の商品を組み合わせてコツコツ資産を育てていくことが大切です。
“リスク”の捉え方
上記では資産運用におけるリスクの意味をお伝えしましたが、「何をリスクと捉えるか」は人によって異なります。
例えば、預けた資産が目減りすることを不安に感じる人もいれば、途中で現金化しにくいことや、成果が出るまでに時間がかかることをリスクと考える人もいるでしょう。あなたが何を一番のリスクと捉えるのか、一度考えてみると新しい発見があるかもしれません。
今回は、価格の変動が小さく、資産価値を大きく損なう可能性が低い金融商品を通して「時間をかけてお金を守りながら育てる」ことを重視した運用方法を紹介していきます。
2:初心者にも人気!NISA(新NISA)のキホン
「NISA(少額投資非課税制度)」は、株式や投資信託などの売却益や配当金にかかる税金(約20%)が非課税になる制度です。本来は利益に対して課税されるこの税金がゼロになるため、効率よく資産運用できることが特徴です。
NISAで運用できるのは、株式や投資信託などです。その中にはさまざまな銘柄があり、2024年からは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを組み合わせて利用できるようになりました。
NISAを利用して資産運用を行う際の注意点は、選ぶ銘柄によって負うリスクが異なることや、投資対象の価格が変動することです。元本が保証される預金商品とは違い、値下がりする場合もある点に注意が必要です。
こうしたリスクを抑えるためには、少額を長期でコツコツと積み立てる運用がおすすめ。投資するタイミングを分散することで価格変動の影響を和らげ、長期的な資産形成につながりやすくなります。
積み立て運用を行う際はどんな商品を選ぶかが大切ですが、自分に合った商品を選びたいものの、何を基準にすればよいか迷う方も多いでしょう。そんなときは、ロボットアドバイザーなどのサービスを活用するのも一つの方法です。例えば京葉銀行では、いくつかの質問に答えるだけで、自分に合ったファンドを提案してくれる「FUND Navi(ファンドナビ)」を提供しています。
まずは、少額から積立投資が始められる「つみたて投資枠」を利用して、無理なく続けられる運用方法を見つけてみてはいかがでしょうか。
3:老後の備えに。iDeCoの特徴と注意点
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、老後資金を自分で準備するための私的年金制度です。原則として20歳以上65歳未満の方が加入でき、公的年金を補う「自分年金」として注目されています。
大きなメリットは、運用益のすべてが非課税になる点に加え、掛金の全額が所得控除の対象となる点です。例えば、年収500万円の人が、毎月2万円ずつiDeCoに掛金を拠出した場合、年間24万円が所得控除の対象となり、所得税(10%)と住民税(10%)をあわせて、年間4万8,000円が節税できます。
一方でiDeCoには注意すべき点もあります。選ぶ銘柄によっては価格が大きく変動するため、 国内外の株式に投資する運用商品などは、リスクが高くなる傾向があります。また、原則として60歳になるまで資金を引き出すことができないため、教育資金や住宅購入・リフォーム資金など、近い将来に使うお金の預け先には不向きです。
こうしたリスクを抑えるには、早めにiDeCoに加入し、時間をかけて資産を積み立てていくことが効果的です。また、運用する銘柄を複数指定し、資産を分散させるのもよいでしょう。
iDeCoは月5,000円の掛金から始めることができ、上限額は加入資格(会社員・自営業・公務員など)によって異なります。少額から始められる制度ですが、注意したいのは手数料です。毎月の掛金に対して数百円程度の管理手数料が発生するため、掛金が少なすぎると、利益よりも手数料のほうが大きくなってしまう場合もあります。そのため、無理のない範囲で、ある程度まとまった金額で運用するのがおすすめです。加入前には、自身の掛金上限や手数料についても忘れずに確認しましょう。
4:やっぱり安心?定期預金の特長と活用方法
定期預金は、一定期間預けることで利息を受け取れる、安全性の高い貯蓄方法です。元本が保証されており、万が一金融機関が破綻しても、預金保険制度によって元本1,000万円とその利息までが保護されます。預け入れ後の価格変動がない点も、大きな安心につながっています。
ただし、価格変動のリスクがない分、他の金融商品と比べると得られる利益は少なめです。それでも近年は、預金金利が上昇傾向にあり、この先も金利が上がっていく可能性もあります。数年以内に使う予定のあるお金の保管先として特に有効でしょう。
5:保険で“守りながら資産を育てる”方法とは?
「保険」というと「怪我や病気への備え」といったイメージがあるかもしれませんが、「保障」と「貯蓄」の機能を併せ持つ保険商品もあります。特に活用できるのが、個人年金保険と終身保険です。
個人年金保険は、将来の生活資金や老後資金を作るための保険です。保険料を一括で支払う「一時払い」と、定期的に保険料を支払う「平準払い」があり、どちらも満期後に一時金もしくは年金でお金を受け取ることができます。
終身保険は、一生涯にわたって死亡保障が続く保険でありながら、資産形成にもつながるのが特徴です。将来の相続に向けた対策としても活用されることが多い商品です。終身保険も一時払と平準払を選ぶことができます。
いずれの保険も、長期契約を前提に資産を積み立てることで、将来まとまった金額を受け取れる点や、保障が付いているため、万が一の際には家族への備えになる点が特長です。また、所得控除の一種である「生命保険料控除」を利用すれば、節税にもつながります。
保険特有のリスクは、選ぶ商品にもよりますが、途中で解約した際の受取額(解約返戻金)が、払い込んだ保険料を下回る可能性がある点です。また、米ドルなどの外貨で運用する「外貨建て保険」や、運用結果次第で保険金や解約返戻金などが変動する「変額保険」の場合、価格変動リスクもあります。
よって、少しでもリスクを抑えるなら、円建ての保険や、受取額が変動しない「定額保険」を検討するとよいかもしれません。
6:目的と時期で選ぶ、リスクを抑えた資産運用の実践アイデア
資産運用を始める前には、資産運用の目的や、使う時期を明確にすることが重要です。一例ではありますが、以下に、目的や時期に合わせた管理方法をご紹介します。
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- すぐに使えるお金(1年以内):
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当面の生活費を普通預金に入れておく。家族構成にもよるが、生活費の半年分程度を確保しておくとよい
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- 近い将来に使うお金(5年以内):
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定期預金を活用。価格変動がないため、必要なタイミングで元本割れの心配なくお金を引き出せる
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- 中期で使うお金(5~10年程度):
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NISAを活用した積立投資が有効。毎月少額を積み立てることで、価格変動の影響を和らげながら運用できる。より安定性を求めるなら、定期預金との併用もおすすめ
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- 老後に使うお金(10年以上先):
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iDeCoや個人年金保険で計画的に積み立てる。所得控除による節税効果も得られる。終身保険は相続対策や家族への備えとしても有用
なお、これらはあくまで一般的な目安です。実際には、ご自身のリスク許容度やライフプランに応じて、選ぶ金融商品や運用期間は変わってきます。そのうえで、短期・中期・長期のバランスを意識しながら資産を管理することが、リスクの分散につながります。
蓄え上手への近道は「先取り貯蓄」
「お金があるとつい使ってしまう……」という方にこそ取り入れてほしいのが、「先取り貯蓄」です。これは、給与を受け取ったその日に、一定額を貯蓄用の口座などに移しておく方法。あらかじめ「貯めるお金」と「使うお金」を分けておくことで、意識しなくても自然とお金が貯まる仕組みをつくることができます。こうした管理スタイルが定着すれば、毎月の収支に左右されずに、安定的に資産を積み上げていくことができるでしょう。
また、手間なく継続したい方には、決まったタイミングで口座から一定額を自動で積み立てる「積立定期預金」や、給与受け取りと同時に投資を行う「自動積立投資」などを活用するのもおすすめです。
「先に貯蓄や投資を行い、残った金額を生活費に充てる」という仕組みを確立すれば、お金が自然に貯まっていきますよ。
目的に合わせ、リスクを抑えた資産運用を実践しよう
「人生100年時代」といわれる今、資産形成の必要性が増しています。これからの生活や老後を見据え、リスクを抑えながら、資産を守り育ててはいかがでしょうか。資産運用の手段や各商品に関する不明点などは、ぜひお近くの金融機関で相談してみてくださいね。