Posted on August, 2021
長期投資では誰もが手軽に実践できる「勝ちパターン」として広く知られている、ドルコスト平均法。その有効性は多くの投資家に認められており、今から投資をはじめる方にもおすすめです。ドルコスト平均法のメリットはいくつかありますが、初心者でも手軽に始められて、投資経験の差が影響しにくいことも大きいでしょう。
しかし、いくら初心者向きで多くの人にとって「勝ちパターン」であるとはいっても投資にリスクは付き物です。メリットだけでなくリスクや注意点もマスターし、ドルコスト平均法を味方につけるために必要な知識を伝授します。
「ドルコスト平均法」とは、積立投資によって実践できる投資法です。株や投資信託などの金融商品には、価格変動があります。その変動リスクを抑えるため、一度に投資をするのではなく、毎月や毎週など定期的に一定額ずつ投資をすると購入額が平均化されます。
これがドルコスト平均法で、積立期間が長くなればなるほど価格が平均化される期間が長くなるため、よりリスクに強い投資法となります。
一定額ずつ投資し続けることがポイントで、結果的に投資対象の金融商品が安いときには多く買い、高いときには少なく買うことになります 。価格下落のリスクはメリットに、同時に価格上昇時のリスクに対しては高値づかみを防ぐ効果があります。
分散投資は、投資のリスクを抑える基本的な考え方です。投資商品を分散することを連想しがちですが、一度に買わず複数回にわけて買うことによる時間軸の分散もリスク管理において有効です。ドルコスト平均法は一度にすべてを買うわけではないため、後者の時間軸によるリスクの分散手法ともいえます。
同じ金融商品への投資であっても、投資期間を長くして少しずつ買うことによって取得価格が平均化されるため、期間が長くなればなるほど価格変動による影響を受けにくくなります。
ドルコスト平均法の対極にある投資法は「一括集中投資」で、これだと購入時の価格から下落すると資産が目減りするリスクが大きくなります。
一括集中投資と比べてドルコスト平均法だと投資商品の購入に時間がかかりますが、それだけの時間をかけることによってリスクを管理できるのですから、「時間がかかる」というより「時間を味方につける」と考えることができます。
ドルコスト平均法による資産形成に向いている人は、どんな人でしょうか。以下に3つの例を挙げてみました。該当するものが多い人ほど、ドルコスト平均法の性質に合っているといえます。
ドルコスト平均法は長期投資の「勝ちパターン」なので、時間がある人に向いています。つまり、現役世代の人で長期的な視野で資産形成を考えたい人であれば、ドルコスト平均法が向いているといえるでしょう。
一度に数百万円、数千万円といった金額を用意できない人も、ドルコスト平均法に向いています。なぜならドルコスト平均法は積立投資が基本であり、1回あたりの投資金額が数万円レベルからでも十分可能だからです。
投資はお金を増やすための手法なので、どうしても一獲千金を夢見てしまいがちです。こうした夢を追い求める人には、ドルコスト平均法は物足りないかもしれません。しかし長期的な視野でコツコツと資産を増やしていくスタンスを持てる人であれば、ドルコスト平均法と合っているといえます。
ドルコスト平均法を実践するのは、とても簡単です。運用対象となる金融商品を決めて、それを毎月、毎週といった期間を決めて定期的に一定額ずつ購入し続けるだけです。
運用対象には株や投資信託、外貨などがありますが、長期投資が前提なのでなるべくリスクの低いものであることが望ましいです。個別株だとその企業と運命を共にすることになってしまうので、複数の株で運用するETF(上場投資信託)や、REIT(不動産投資信託)などリスク分散型商品を好む投資家もいます。
なお、ETFとは株価指数などと連動するように運用されている投資信託のうち、銘柄として上場している商品 のことです。日本だけでなく米国など世界各国にETFがあるので、幅広いラインナップから選ぶことができます。インデックス型(指数と連動するタイプ)なので手数料が安い傾向があることも長期投資を考えるうえでメリットとなります。
もう一方のREITとは不動産型の投資信託で、ひとつのファンドで複数の不動産を運用しているため単体でもリスク分散効果があります。REITのうち証券取引所に上場している銘柄群のことを、J-REIT といいます。2021年6月現在、J-REIT全銘柄の平均利回りは3%台 です。安定的な利回りもJ-REITのメリットといえるでしょう。
積立投資をするうえで重要なのは、対象となる金融商品の価格に関係なく「一定額ずつ購入」を遵守することです。これを遵守しないと、ドルコスト平均法の理論的根拠である価格平均化のメリットは得られないと考えたほうがよいでしょう。
ドルコスト平均法のメリットを最大化するために知っておきたい、注意点についても解説します。注意点は主に4つあります。
価格の変動がある商品を購入し続ける投資方法なので、目先の価格変動に一喜一憂しないようにしましょう。よくあるのは少し利益が出たところで売ってしまい、投資を終わらせてしまうパターンです。人間心理として目先の利益を獲得したい気持ちは理解できますが、時間を味方につけないことにはドルコスト平均法のメリットが最大化されません。
「続ける」ことが一番のパワーになるので、できるだけ相場を見ずに機械的に買い続けるのがよいでしょう。
先ほど、機械的に買い続けることがドルコスト平均法の基本であると述べました。手作業だとどうしても相場を見てしまい、あれこれ考えてしまうのが人情です。そこで、可能であれば最初に設定をして自動的に一定額ずつ購入し続けるサービスを利用することをおすすめします。
銀行 や証券会社 には投資信託の自動積立サービスがあるので、それを利用すると相場の動きに一喜一憂することなく機械的に積立を続けることができます。
利回りや成長力などの魅力から米国のETFでドルコスト平均法を実践したいと考える人は多いですが、珍しいサービスとしてSBI証券には米国ETFの定期買付サービス があります。これを利用すると米国ETFの自動積立ができるので、おすすめです。
多くの人にとって「勝ちパターン」であると述べてきたドルコスト平均法ですが、相場の展開によってはダメージを受けることもあります。価格が右肩上がりになっているものやレンジ相場といって一定の範囲内を往来しているような商品であればドルコスト平均法が有効ですが、長期間にわたって右肩下がりの商品では購入価格の平均化がうまく機能しません。
長期間で見たときに右肩上がりの価格推移が続いている商品がドルコスト平均法に合っているといえます。
どんなに長期間の投資であっても、いつかは終了し、利益を確定させるときがきます。ドルコスト平均法を続けていくと購入価格が平均化されていきますが、いつやめるかによって最終収支が決まるため、終了時の価格によってはマイナスになってしまうリスクがあります。
あらかじめ年数を決めておいて、その年数満了で新規積立を終了し、以後は積み立てられたETFなどの配当利回りを生活費の足しにするといったように、積立を終了したあとの戦略を描いておくことも重要です。
その他にも、資産形成の目標額を達成したらやめるといったように、ただ漫然と続けるのではなくプラス収支で終了するための出口戦略を最初に描いておきましょう。
ドルコスト平均法が「勝ちパターン」となり得るのは、長期投資で時間を味方につけられるからです。長期間にわたってその威力を発揮できるように最初の戦略をしっかりと立て、積立期間中は10年後、20年後の自分のためであることを意識しながら機械的に続けていくことが成功の秘訣です。
著者:田中タスク
エンジニアやWeb制作などを経験した後にFXを出会い、それを契機に投資系ライターとしての活動を開始。自身もさまざまな投資を経験し、その経験をいかした執筆活動に強みをもつ。長期的な視野にたって資産運用の重要性を強く感じ、不動産投資を含む中長期的な投資の生きた情報を発信するための記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。