京葉銀行
2026
2/25

その医療費、戻ってくるかも。
医療費控除で節税するポイント

くらしのヒント
くらしのヒント

ホームその医療費、戻ってくるかも。医療費控除で節税するポイント

医療費控除と聞くと、「医療費が10万円を超えた年だけ使える制度」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際には、控除の基準は所得額によって異なり、条件によっては10万円を超えなくても対象になることがあります。また「どこまでの支出が医療費に含まれるのか」「会社員でも確定申告は必要なのか」といった点は、意外と迷いやすいポイントなのではないでしょうか。

そこで本記事では、医療費控除の基本的なしくみを押さえながら、対象となる費用の考え方や、確定申告での申請方法をわかりやすく解説します。

株式会社Money&You取締役、ファイナンシャル・プランナー 中央大学客員講師
高山 一恵さん

2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社) 、『50代から考えるお金の減らし方』(成美堂出版)など書籍100冊、累計200万部超。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた分を所得から差し引くことができる制度です。この控除を受けるには、年末調整ではなく確定申告を行う必要があります。会社員などの給与所得者であっても、医療費控除を受ける場合は自分で申告しなければなりません。

医療費控除の対象になるのは、①納税者本人、②生計を一にする配偶者、③生計を一にする親族(子どもや両親など)の医療費です。家族分の医療費をまとめて申告できるため、所得税率が高い人が申告すると、戻ってくる税金(還付額)が多くなりやすくなります。

例えば共働きの夫婦の場合、「収入が高い方」や「税率が高い方」に医療費を集約して申告すると、お得になる可能性が高くなります。

医療費控除の上限額(控除できる最高額)は、年間200万円と定められており、「1年間で実際に支払った医療費」をもとに計算されます。基本となる考え方はシンプルで、計算式で表すと、次のようになります。

  • (1年間に支払った医療費の合計 − 保険金などで補填された金額)− 差し引かれる基準額 = 医療費控除額

総所得金額が200万円以上の人は、年間医療費が10万円を超えた場合、その超えた金額が医療費控除の対象となります。一方、200万円未満の人は、総所得金額の5%を超えた金額が対象です。例えば総所得金額が100万円の場合、基準額は5万円となります。そのため、年間の医療費がこの金額を超えれば、医療費控除の対象となります。

  • 総所得金額とは、年収から給与所得控除などを差し引いた給与所得に、事業所得や不動産所得など複数の所得を合算した金額のことを指します。給与の額面である年収とは異なるため、注意が必要です。

医療費控除と高額療養費制度は併用できる?

「高額療養費制度」とは、1ヵ月間に支払った医療費の自己負担分が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、超えた分が後で払い戻される制度です。

この高額療養費制度は、医療費控除と併用することが可能です。ただし、高額療養費制度で払い戻された分は医療費控除の対象外となり、実際に自分で負担した金額だけが対象となることに注意しましょう。

医療費控除には、対象となるものとならないものがあり、その判断のポイントになるのが「治療を目的とした支出かどうか」です。医師の指示による病気やけがの診療・治療のために直接必要な費用であれば対象になりますが、予防や健康維持、美容を目的としたものは、原則として医療費控除の対象外となります。

対象となる例 対象とならない例
・医師による診療・治療費

・治療に必要な医薬品代(予防や健康増進目的のものは原則対象外)

・通院・入院時の交通費(電車・バスなどの公共交通機関)

・治療に必要な医療用器具(コルセット、マウスピースなど)

・歯科治療(矯正、インプラントなども「治療目的」であれば対象になる場合あり)

・治療目的のマッサージ(神経痛・リウマチなど特定症状に対し、国家資格者が行う場合に限る)

・出産費用

・介護サービス利用料

・市販の薬

・レーシック、ICL

など
・自家用車で通院した場合のガソリン代・駐車場代

・原則としてタクシー代(公共交通機関が使えないなど、やむを得ない場合は例外あり)

・健康診断・人間ドック・予防接種

・コンタクトレンズ

・審美目的の歯科治療(ホワイトニングなど)

・疲労回復・リラクゼーション・美容目的のマッサージ

・サプリメント

など

医療費控除は、年末調整では手続きできないため、会社員やパート・アルバイトの方であっても、利用する場合は自分で確定申告を行う必要があります。

確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日)に得た所得を税務署に申告し、最終的な税額を確定させる手続きのこと。その中の一つとして医療費控除を申請します。

ここでは、医療費控除を受けるための基本的な流れをご紹介します。

1. 申告に必要な書類を用意する

医療費控除の申告には、次の書類が必要です。

必要な書類 備考
医療費控除の明細書(必須) 国税庁サイトからダウンロード可能
  • 健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」などの医療費通知を添付すると、明細書の記入を一部
領収書 提出は不要、ただし5年間の保存義務あり
確定申告書 国税庁サイトからダウンロード可能
源泉徴収票 提出は不要、内容を申告書に転記
本人確認書類 マイナンバーカード(ない場合は通知カードと運転免許証など)
銀行口座情報 還付金受取用の口座情報

2. 「確定申告書」と「医療費控除の明細書」を作成する

医療費控除を受ける際は、「確定申告書」に「医療費控除の明細書」を添付します。

「医療費控除の明細書」には①医療を受けた人の氏名、②支払い先、③医療費の区分、④金額、⑤保険金などで補填された金額を記載し、1年間にかかった医療費を整理してまとめます。あらかじめ日付順、医療機関別、項目別など、自分なりのルールで領収書を整理しておくと、スムーズに入力できます。

「確定申告書」と「医療費控除の明細書」のページや具体的な作成方法については、国税庁が提供している記入例を参考にしてください。

出典:

国税庁「年分 医療費控除の明細書【内訳書】」(PDF)
国税庁「医療費控除を受ける方の記載例」(PDF)

3. 申告はオンラインが便利

国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に沿って入力していくだけで手続きを進められます。パソコンやスマートフォンから申告でき、「e-Tax(電子申告)」を使えば自宅で簡単に申告を完了できます。

出典:

国税庁「国税庁 確定申告書等作成コーナー」

セルフメディケーション税制

医療費控除の代わりに検討できる制度として、「セルフメディケーション税制」があります。これは、健康の保持・増進や病気の予防に取り組んでいる人が、指定された市販薬を一定額以上購入した場合に利用できる所得控除制度です。

この制度を利用するには、本人が定期健康診断や予防接種などの「一定の取り組み」を、その年に行っていることが条件となります。また、対象となるのは、医療用医薬品から市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」のうち、制度の対象として指定されたものに限られます。

セルフメディケーション税制の対象は、年間の対象医薬品の購入額が12,000円を超えた場合であり、その金額を超えた部分が控除されます。控除できる金額の上限は88,000円です。

なお、セルフメディケーション税制は、通常の医療費控除と併用することはできません。同じ年に利用できるのは、どちらか一方のみです。「医療費が多くかかった年は医療費控除」「通院は少ないものの、市販薬の購入が多い年はセルフメディケーション税制」というように、事前に金額を比較し、自分にとって有利な制度を選ぶことが大切です。

医療費控除の申告手続きは、初めての方には難しく感じられるかもしれません。しかし、制度の概要と申告の流れを把握しておけば、必要以上に構える必要はありません。1年間に支払った医療費を整理し、ご自身が控除の対象となるかを確認したり、税金の知識を身につけたりすることは、家計管理や将来の資金計画を見直すきっかけにもなります。制度を正しく理解したうえで、状況に応じて活用していきましょう。